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死を治すために骨を巻こう / Bandage around the bone for healing death

3 × 3
Bandage and bone, experience-based work, size changeable, 2021
死の象徴である「骨」と生きている人間の共同作業により、死を治療し続ける体験型の作品で、本作は骨のみでは作品として不完全であり、鑑賞者が関わることで作品として成立します。

作家が獣医大学の学生時代に自らつくった骨標本(牛の大腿骨)に、白い粘着性包帯を巻いてもらうという作品で、鑑賞者が一対一で骨と向き合うようになっています。
骨は「死」を感じさせるものの一つです。生きている者の骨に直接触れられる機会はほとんどありません。触れられるようになった時、骨の持ち主はだいたい死んでいます。

死はかつて、人が最も苦しむ出来事でした。スイス生まれの精神科医、エリザベス・キューブラー・ロス博士の著作では、本人の死や自分の最愛の人の死が、人にとって最も苦しみとなることが書かれています。しかし、近年では自殺を選ぶ人も増えており、死は最苦ではなく、救いになっているように感じます。
死が個人の救いになってしまうとしたら、それは個人が暮らす社会環境が病を抱えているからではないかと私は考えます。病に侵された環境の影響を受けて、私たちは死に向かわされているのではないかと。しかし、生物とは、生きて種を残すことを目的にプログラムされた存在です。

これまで個人に向かっていた医療を、社会に向けるべき時がきているのではないでしょうか。では、社会を癒し、社会から癒される関係をつくるにはどうしたらいいのでしょう。人が死ぬというのは、社会にとっても大きな出来事です。特に、自殺や他殺が周囲の人々に与える精神的な影響は甚大です。

病気になった人が孤独にならないように、死が社会の他の領域を蝕まないように、私たちは力を合わせ、死を癒していく必要があるのではないでしょうか。

骨とは対照的に、包帯を骨に巻く人は生きている存在です。何かを巻くというのは、怪我をした時の一般的な治療行為の一つです。緩和ケアの一つとして知られるタクティールケアでは、人が触れることで安心感や痛みの軽減をもたらすとされています。

包帯が巻かれれば巻かれるほど、骨は姿が見えなくなっていきます。しかし、関わる人がいなければ、骨は骨のままなのです。本作では、一つの骨に対し、多くの人が包帯を巻き、死を治す行為に加わります。

Bandage around the bone for healing death Bandage around the bone for healing death Bandage around the bone for healing death Bandage around the bone for healing death

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